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もし児童精神科医じゃなかったら、児童福祉司に ― それほど尊敬する職種です

[2025.05.07]

こんにちは。

江戸川篠崎こどもと大人のメンタルクリニックの院長の三木敏功(児童精神科医、子どものこころ専門医)です。

私はこれまで多くの子どもたちと出会い、その一人ひとりの背景に寄り添いながら診療を続けてきました。
診察室での時間は限られていますが、子ども・家族が抱える苦しみやSOSのサインを感じ取り、少しでも安心してもらえるようにと心がけています。

しかし実際のところ、診察室で関わる時間以上に、子どもの人生を支えているのは誰かと言えば、それは児童相談所の児童福祉司の皆さんです。

本日のブログでは、私の尊敬する職種である児童相談所の福祉司さんの魅力を書いてみたいと思います。

7月7日、夜9時からフジテレビで 児童相談所をテーマにしたドラマ『明日はもっといい日になる』が始まりました。
ドラマを見て「児童福祉司ってこんな仕事なんだ」と感じる方も多いと思います。
このブログを通じて、現場で奮闘する福祉司さんのリアルな思いも少し知っていただけたら嬉しいです。

【目次】

  1. 「子どもの命と未来」を守るということ

  2. 決断の重さと覚悟

  3. 現場で見た福祉司さんの力

  4. 福祉司から学ぶ「現場の知恵」

  5. チーム支援の真価

  6. 一人じゃないというメッセージ

  7. 私が福祉司を尊敬する理由

  8. 最後に

1. 「子どもの命と未来」を守るということ

児童福祉司の仕事は、一言で言えば「子どもの命と未来を守る」ことです。
子どもの毎日を支え、時には家庭や学校、地域と調整しながら安全を確保していく。その過程で、子ども自身の気持ち、保護者の思い、そして社会の期待が複雑に絡み合います。

ある(架空の)ケースでは、学校に行けずに家に引きこもっている子どもがいました。
保護者は「怠けているだけ」と考え、叱責を続けていましたが、児童福祉司さんは何度も訪問を重ね、少しずつ子どもと保護者の関係をほぐしながら支援を続けました。

表面的には「ただの怠け」と誤解されることもある不登校。
でも、その裏には、いじめ、家庭内の葛藤、自己肯定感の低下、愛着の課題など、さまざまな要因が隠れています。

児童精神科医は診察室で「診断」という切り口から見ますが、福祉司さんは「生活」「家族」「安心・安全」の切り口から全体を見て、支える。
私はその視点に、深い尊敬を抱いています。

2. 決断の重さと覚悟

児童福祉司の皆さんは、時に非常に重い決断を迫られます。
「このまま家庭に戻してよいのか」「一時保護すべきか」――これらの決断には、子どもの安全、家族関係、地域の支援体制、将来への影響といった複雑な要素が絡みます。

例えば、ある(架空の)ケースでは、母親が精神的に不安定で、子どもに危険が及ぶ恐れがありました。
しかし、母親は強く「一緒に暮らしたい」と訴えていました。
福祉司さんは母親と何度も面談を重ね、支援を模索しつつも、最終的には一時保護という選択をしました。

表面上は「親子を引き離す冷たい判断」と見えるかもしれません。
しかし、その決断の裏には、何度も寝返りを打てないほどの葛藤と、自分自身を責める気持ちがあります。
それでも子どもの命と未来を守るために決断を下す、その覚悟と責任感は並大抵ではありません。

3. 現場で見た福祉司さんの力

エピソード①「粘り強く気持ちに寄り添い続けた福祉司さん」

(架空のケース)学校に行けず引きこもる中学2年生の男の子がいました。
母親は「もうこの子はダメだ」と相談を拒み続け、やっとたどり着いた医療の初診時にも、医師から入院治療の提案があったことで少年は警戒的になり、フードを深く被り、一言も話さず目も合わせませんでした。母親の絶望は深まるばかりでした。

一方、福祉司さんは違いました。
最初は門前払いされても、何度も訪問し、玄関先で粘り強く話し続けました。

「学校に戻さなきゃ、ということではないんです。まず、この子が安心できる場所を一緒に探しましょう。」
「お母さんも一人で抱え込まなくていいんですよ。」

ときには一緒に家族に寄り添い続けました。
数ヶ月後、少年は「外に出てみようかな」と言い、地域のフリースクールに見学へ行けるようになりました。

「この子のペースでいい」と言い続けた福祉司さんの姿勢に、私は強く感銘を受けました。

エピソード②「命を守る苦渋の決断」

(架空のケース)ある女の子のケースでは、家庭内暴力が続き、一時保護が検討されていました。
保護者は強く反発し、「うちの家庭に口を出さないで」と繰り返していました。

会議では「このまま家庭に置くべきか」「一時保護すべきか」が議論され、福祉司さんは深い葛藤の中にいました。

最終的に「このままでは命に関わる」と一時保護の決断をしました。
それは「幸せな家族の形」ではありませんでしたが、その決断があったからこそ彼女の未来は守られました。

保護後、女の子は安心して眠れるようになり、少しずつ心の傷を語れるようになりました。
このプロセスをそばで見ながら、私は「これほどまでに子どもの命と未来を守る覚悟を持った職種があるだろうか」と、改めて福祉司さんへの尊敬を深めました。

4. 福祉司から学ぶ「現場の知恵」

私が児童精神科医として学んできたことの多くは、実は福祉司さんとの連携の中から生まれています。

たとえば、支援者会議での保護者への声かけ一つにしても、「伝え方」には大きな違いがあります。
医師としては「診断名」や「治療法」など医学的な説明に偏りがちですが、福祉司さんは「お母様(お父様)の気持ちはどうですか」と、まず保護者の感情に寄り添う言葉を選びます。

これはとても大切な視点です。
どんなに正確な医学的説明でも、保護者が気持ちを受け止めてもらえていないと感じたら、その後の協力は得られません。
福祉司さんは、その「感情の土台」を整えるプロフェッショナルだと感じています。

また、「限界設定」の考え方も大きな学びです。
支援の現場では「ここまではできるけど、ここから先は難しい」という線引きを明確にする必要があります。
これがあいまいだと、支援者が抱え込みすぎて燃え尽きるリスクが高まります。
福祉司さんは、その線引きを具体的に共有し、子どもや保護者に誠実に伝える力を持っています。

5. チーム支援の真価

私が尊敬してやまないのは、福祉司さんが「一人で何とかしよう」とせず、必ずチームで動く姿勢です。
医療、心理、教育、行政、それぞれが異なる視点を持っています。
特に児童精神科医は、脳の機能や発達の観点から子どもを見ることが多いですが、生活の現実を知っているのは福祉司さんです。

例えば、医師として「この薬を使うと落ち着くでしょう」と言うとき、福祉司さんは「でも、この子は服薬に強い抵抗があります」「家庭で管理できる環境ではありません」と現場の実情を教えてくれます。
そうした情報がなければ、医療的に正しくても実現できない「机上の空論」になってしまうことが少なくありません。

私は福祉司さんと一緒に「この子・家族にとって本当に必要な支援は何か」を議論する時間が、何よりも大切だと思っています。
多職種連携という言葉は簡単ですが、そこには対話、調整、信頼の積み重ねが不可欠です。

6. 一人じゃないというメッセージ

児童福祉司の仕事は、孤独との戦いでもあります。
支援を進める中で、保護者から批判されることも多く、時には「あなたは私たちの家庭を壊すつもりなのか」と責められることもあります。
それでも、子どものために、折れずに立ち続ける。

そんなとき、私たち医師をはじめとする他の専門職が「あなたは一人じゃない」と伝えることが大切だと思います。
連携会議で意見を出し合い、現場での情報を共有し、時には一緒に悩み、考え続ける。
そうした姿勢が、福祉司さんの支援力をさらに強くすると信じています。

7. 私が児童福祉司を尊敬する理由

私は、もし児童精神科医でなかったら、間違いなく児童福祉司を目指していたと思います。
子どもを守り、その未来を築く最前線で戦う姿勢に、心から憧れと尊敬を抱いています。

もちろん、児童福祉司という仕事には終わりが見えない課題、理不尽な批判、答えのない悩みがつきまといます。
それでも、その仕事が「子どもの命と未来を守る」という意味で、これ以上に尊い職種はないと感じています。

8. 最後に

児童福祉司として働く皆さん、日々の支援、本当にお疲れ様です。

児相福祉司さんの支援のおかげで、子どものこころの薬の量が減らせたり、精神科入院を防げたこと多々ありました。

これからも、子どもの最善の利益を第一に考え、ともに歩んでいけることを願っています。

私も児童精神科医として、そして一人の支援者として、皆さんの思いに応えられるよう努力し続けます。

「もし児童精神科医じゃなかったら、児童福祉司に ― それほど尊敬する職種です」
この思いを胸に、これからも福祉司さんと一緒に、子どもたちの未来を支えていきたいと心から思っています。

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