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「もう一度、学校へ行けるかも」―江戸川区の不登校支援を児童精神科医が紹介します

[2025.06.01]

こんにちは。

江戸川篠崎こどもと大人のメンタルクリニック、院長の三木敏功(児童精神科医・子どものこころ専門医)です。

本日は、江戸川区の不登校支援体制の素晴らしさと、支援を上手に使いこなすためのヒントについて、お伝えしたいと思います。

【目次】

  1. 不登校支援に「地域の力」が欠かせない理由
  2. エンカレッジルーム ― 特別支援教育の専門的支援
  3. みらいサポート教室 ― 不登校生徒への個別支援教室
  4. 共育プラザのユースサポート登録 ― 第三の居場所で安心を育てる
  5. 教育相談室 ― 保護者・本人・学校のよりどころ
  6. 登校サポート事業 ― ステップサポーターの同行支援
  7. 校内別室指導支援員配置 ― 「教室には入れない」子への伴走支援
  8. 【実例紹介】“不登校”から“再出発”までの一つの物語
  9. 江戸川区の支援を上手に使うために
  10. 最後に
  11. 参考リンク・公式情報

1. 不登校支援に「地域の力」が欠かせない理由

「不登校」は、本人だけの問題ではありません。

家庭や学校だけで完結させようとすると、保護者は疲弊し、学校は対応に限界を感じ、子ども自身も「誰にも助けてもらえない」と感じてしまうことがあります。

しかし、江戸川区には、教育・福祉・地域が連携しながら「その子らしい成長の歩み直し」を支える体制が整っています。

23区の中でも有数の充実した支援体制であるという実感を強くもっています

私のクリニックにも、江戸川区の制度を活用して学校復帰を果たした子どもたちが数多く通っています。

地域全体が子どもを見守り、多様な支援の選択肢を持つことが、本人の「(登校を)もう一度やってみようかな」という気持ちを育てる土台になります。

江戸川区では、教育委員会を中心に、子どもたちがそれぞれのペースで「自分らしさ」を取り戻すことができるよう、以下のような支援体制が整えられています。。

このブログでは、江戸川区の支援体制を、実際の連携事例とともに紹介していきます。

2. エンカレッジルーム ― 特別支援教育の専門的支援

発達特性や情緒的な課題を抱える子どもにとって、教室の中は「安心できる場所」でないことがあります。

そんな子どもたちに対して、「安心できる学びの場」を提供しているのがエンカレッジルームです。

エンカレッジルームは、発達障害や情緒的な課題を抱える児童生徒に対して、特別支援教育の視点から個別に対応を行う教室です。

当院の多くの子どもたちも、この教室を利用して、元気と自信を取り戻しています

✅ 特徴

  • 専門の特別支援教員が常駐し、学習・対人関係の困難を個別に支援
  • 通常学級では難しかった「本人のペースに合わせた安心の学び」を保障
  • 学校適応に向けた段階的な支援計画をチームで策定

(架空のケース)小学生のケースでは、「教室は怖い。でも学ぶのは嫌いじゃない」と話していた子が、この教室で少しずつ自信を取り戻していきました。週に1回の利用からスタートし、徐々に人と関わる力が育ち、3ヶ月後には「音読が楽しい」と言って、他の子の前で発表できるようになったのです。

3. みらいサポート教室 ― 不登校生徒への個別支援教室

みらいサポート教室は、江戸川区内に6か所ある不登校生徒向けの個別対応型の支援教室です。私にとっては、不登校支援の柱ともいえる存在です。

不登校傾向にある児童生徒を対象に、学習支援・生活リズムの調整・社会性のサポートなどを行っています。

私にとっては、必要不可欠な支援です。この教室を利用して、多くの子ども達の精神状態が回復し、安心感と自信を取り戻していきました。

✅ 特徴

  • 心身の調子や生活リズムに合わせて通える柔軟な支援
  • 指導員が子どもの気持ちに寄り添って関わる
  • 学校・保護者との定期的な連携と記録共有がある

各教室拠点一覧

  • ふなぼり教室
  • こいわ教室
  • しのざき教室
  • にしかさい教室
  • みなみかさい教室
  • ひらい教室

(架空のケース)中学生のA君は、起立性調節障害と社交不安を背景に長期欠席が続いていました。みらいサポート教室に通い始めたことで、「学校に戻らなきゃ」という焦りから解放され、気持ちが落ち着き、週1回、教室で学べるようになりました。医療だけでは難しかった“社会との再接続”のきっかけになったのです。

4. 共育プラザのユースサポート登録 ― 第三の居場所で安心を育てる

「学校も家庭もしんどい」と感じている子どもたちの中には、「どこにも安心できる場所がない」と感じてしまう子もいます。

共育プラザの支援は、そんな子どもたちの“第三の居場所”です。

共育プラザは、子ども達が安心して過ごせる自由な居場所です。「ユースサポート登録」は、特に不登校や心身不調を抱える子ども達を対象とした支援制度です。

私自身はまだ見学や連携をしたことがなく詳細は理解できておりませんが、現時点では、当院で利用している子どもたちの全員が大満足しております。

✅ 特徴

  • 自由で安心な空間を提供
  • 絵を描く・音楽を聴く・ただ静かに過ごすなど、自分のペースで関われる
  • ユースソーシャルワーカー等が継続的に関与

✅ 実施館一覧(令和7年度予定)

令和7年度 実施館一覧

  1. 共育プラザ小岩
  2. 共育プラザ平井
  3. 共育プラザ葛西
  4. 共育プラザ南小岩
  5. 共育プラザ一之江
  6. 共育プラザ南篠崎
  7. 共育プラザ中央

“学校でも家庭でもない場所”の必要性を、私はこの制度を通して改めて痛感しました。

5. 教育相談室 ― 保護者・本人・教職員の相談窓口

江戸川区には3か所の教育相談室があります。

教育相談室は、不登校・発達障害・いじめ・進路など、学校生活や教育に関する様々な悩みに対応する相談機関です。

保護者のかたとお子さんの健やかな成長のため話し合いをし、お子さんとは遊びなどを通して、その子自身の本来の「力」が発揮できるように関わっていきます。

✅ 江戸川区の教育相談室

  • グリーンパレス教育相談室
  • 西葛西教育相談室
  • 南篠崎教育相談室

✅ 医療者としての実感

私は、豊島区教育相談室で10年間医学相談に携わっており、大変力強い支援機関です。多くの子どもと保護者が具体的な支援を通じて、笑顔を取り戻していく様子を見てきました。江戸川区も非常に実践的で頼れる支援機関だと感じています。「学校ではうまく話せない」子どもが、教育相談室では少しずつ本音を語り始めることも少なくありません。

6. 登校サポート事業 ― ステップサポーターの同行支援

ステップサポーターは、不登校児童生徒の登校再開に向けた“橋渡し役”です。

子どもと一緒に登校したり、学校内でそばにいてくれたりします。

✅ 特徴

  • 子どもの安心感を育てる「人とのつながり」が主役
  • 学校と家庭の距離を埋める「通過点」として機能
  • 教員には手が回らない部分を補完

私は江戸川区ではまだ直接連携経験はありませんが、他区で活用した際、登校しぶりの子が「この人がいれば行けるかも」と話していた場面を思い出します。人との信頼関係が、子どもを動かす一番の力です。

7. 校内別室指導支援員配置 ― 「教室には入れない」子への伴走支援

「登校はできる。でも教室には入れない」――

そんな子どもにとっての心の避難場所が、校内別室支援です。

✅ 特徴

  • 教室以外の場所で学習や休息ができる
  • 支援員が常駐し、個別の支援を提供
  • 学級復帰に向けたステップとしても有効

教室という空間に入るだけで体調を崩していた子が、別室なら少しずつ活動できるようになり、最終的に給食だけはクラスで食べられるようになった例もありました。“戻る”ことより“つながる”ことを重視する制度です。

8. 【実例紹介】“不登校”から“再出発”までの一つの物語(※架空の事例)

小6のMさんは、学級での孤立と先生とのトラブルから学校に行けなくなり、昼夜逆転・食欲低下・不安症状が強く現れていました。

家族は悩み、当院を受診。診察と連携の結果、以下の支援が始まりました:

  • 毎週の通院で、1週間の生活の振り返り診察による内省力と薬物治療での生活習慣の改善
  • 教育相談室で本人と保護者の定期面接
  • みらいサポート教室で午前中だけ通所
  • 家庭訪問型のステップサポーターによる短時間の登校同行
  • (子どもと保護者の許可が得られ)主治医とスクールソーシャルワーカーと教育相談室の担当者との定期的な連携で情報の共有と支援目標を確認

4ヶ月後には、週3日の短時間登校ができるようになり、翌年には教室復帰を目指す気持ちが芽生えてきました。

9. 江戸川区の支援を上手に使うために

どの制度も、「今すぐ学校に戻す」ためのものではありません。

大切なのは「子どもが安心して社会とつながり、自分らしく育っていく」プロセスを支えることです。

✅ 活用の第一歩(例)

  • まずは、担任・SC(スクールカウンセラー)・SSW(スクールソーシャルワーカー)などに相談
  • 医療機関と各関係機関との連携
  • 複数制度の組み合わせも可能(例:教育相談室+外来通院)

支援を受けることは「甘え」ではありません。

環境の力を借りながら、その子らしさを育む」ことが、今の時代に必要な発達支援だと私は考えています。

10. 最後に

江戸川区の不登校支援体制は、全国的に見ても非常に実践的で、子どもたちの「もう一度やってみようかな」を支える力強いサポート網です。

医療・教育・福祉が手を取り合う地域だからこそ、一人ひとりのペースに寄り添った回復が可能になります。

不登校は「親のせい」でも「子の弱さ」でもありません。

“つながり直すチャンス”として、地域の制度を味方につけてくだい。

そして、どの支援も、「今すぐ学校に戻す」ためのものではなく、

「安心して生活し、学び、少しずつ社会とつながっていく」ための選択肢です。

保護者と担任の先生だけで抱え込まず、専門家におご相談ください。

本人の状態に応じて、

「どの支援が合っているか」を、担任の先生、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、養護教諭などの学校の専門職と一緒に考えていくことが第一歩だと私は考えています。

11. 行政・公的機関による参考になるサイト

  1. 江戸川区教育委員会公式サイト

  2. 東京都教育相談センター(都立)

  3. 文部科学省「不登校に関する調査・支援ガイドライン」

 

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