強迫性障害の治療―安心した日常へ戻るためのサポート
強迫性障害(OCD)は、「頭ではやりすぎだとわかっているのに、やめられない」考えや行動が繰り返され、日常生活に大きな支障をきたす心の病気です。たとえば、何度も手を洗わずにはいられない、戸締まりやガス栓を何度も確認してしまう、ある順番や回数にこだわらないと落ち着かない、といった症状が典型的です。
ご本人は「自分の行動が不合理だ」と自覚していることが多いのですが、不安が強く、やめようとしてもやめられない状態が続きます。
強迫性障害の原因と背景
強迫性障害は、ストレスや性格傾向(几帳面、責任感が強いなど)に加えて、脳内の神経伝達物質、特にセロトニンの働きの偏りが関係していると考えられています。誰にでも発症する可能性がある病気であり、けっして「意志の弱さ」や「性格の問題」ではありません。
強迫性障害では、「不安な考え(強迫観念)」と「それを打ち消すための行動(強迫行為)」がセットになって生活の中に現れ、徐々にその行動がエスカレートしていく傾向があります。
よくみられる症状の例
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不潔恐怖と洗浄行為:汚れや細菌への恐怖から、手洗いや入浴、洗濯を過剰に繰り返します。ドアノブや手すりなどが「汚れている」と感じて触れなくなることもあります。
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加害恐怖:自分が誰かを傷つけてしまったのではないかという不安が頭から離れず、新聞やテレビで事件を確認したり、警察や知人に繰り返し確認してしまいます。
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確認行為:戸締まり、ガス栓、電気機器のスイッチなどを何度も確認したり、目で見張ったり、手で触って確認し続けてしまいます。
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儀式行為:決まった手順で物事を行わないと不安になり、日常生活の中で複雑なルールを自分に課してしまうことがあります。
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数字や対称性へのこだわり:縁起の悪い数字を避ける、物を左右対称に並べないと落ち着かない、などのこだわりが強く出ることもあります。
当院での治療について
当院では、強迫性障害に対する治療として薬物療法を中心に行っております。初診時には精神科専門医がじっくりとお話を伺い、症状の経過や生活背景、困っていることなどを丁寧に確認しながら、無理のない治療方針をご提案します。
薬の効果があらわれるまでには数週間かかる場合がありますが、継続することで日常生活のしやすさを取り戻していける方も多くいらっしゃいます。
また、当院では「できるだけ少量・必要最低限の薬での治療」を心がけています。薬に対して不安を感じている方にも、効果や副作用についてしっかりとご説明し、ご本人が納得できる形で治療を進めていきます。
お一人で悩まず、まずはご相談ください
強迫性障害は、ご本人にとって非常につらい症状であるにもかかわらず、周囲には理解されにくい病気です。「こんなことで病院にかかっていいのだろうか」「ただの性格の問題かもしれない」と悩まれている方も多くいらっしゃいます。
しかし、強迫性障害は早めに治療を始めることで、症状の悪化を防ぎ、改善への道が開ける病気です。生活の中で困っていることがある、時間やエネルギーを無駄にしてしまっていると感じる場合は、どうか一度ご相談ください。
当院では、ご本人の不安や生活状況に寄り添いながら、負担の少ない形での治療を大切にしています。