「子どもが死にたいって言ってきた」ー大人にできることー
こんにちは。
江戸川篠崎こどもと大人のメンタルクリニック院長の三木敏功(精神科専門医 子どものこころ専門医)です。
今回は、少し重たいテーマかもしれません。
でも、今の子どもたちにとって、とても大事なお話です。
「死にたい」って、本当に死にたいの?
「うちの子が“死にたい”って言ってきて…」
「リストカットしてるかもって聞いて、心がざわついた」
そんな話を聞くことが、最近本当に増えています。
でも、子どもたちの多くは「本当に死にたい」わけではありません。
「助けて」「わかってほしい」――それが本音のことがほとんどです。
- 学校がつらい
- 友だちとうまくいかない
- 親に気持ちを分かってもらえない
こんな思いが少しずつ積もり、「もうムリ…」と感じたときに、
「死にたい」「いなくなりたい」という言葉としてあふれてしまうのです。
大人がパニックにならないために
そうした言葉を聞くと、親も先生も驚き、怖くなるのは当然です。
「すぐ入院させたほうがいいですか?」というご相談も少なくありません。
でも、まず必要なのは「急いで動くこと」ではなく、
子どもの心の声に耳を傾けることです。
「この子は、本当に命の危険があるのか」
「それとも、何かのきっかけで爆発してしまっただけなのか」
落ち着いて、丁寧に見ていくことが、最初にすべきことなのです。
子どもたちの“こころの番人”になれるのは?
子どもたちがつらさを口にするのは、信頼できる相手にだけです。
それは、親かもしれない。先生、部活のコーチ、保健室の先生、友達自身かもしれない。
その人たちが「こころの番人」――つまり、子どものゲートキーパーになれるのです。
たとえば、こんな一言が大きな支えになります。
- 「最近、元気ないけど、何かあった?」
- 「話したいことがあったら、いつでも聞くよ」
- 「あなたのこと、大事に思ってるよ」
「専門家じゃないから…」「どう対応すればいいか分からない」
そう思う必要はありません。話を聴くだけで十分な支援になることがあるのです。
声をかけるのが怖いときは…
「余計なお世話にならないかな」
「重い話をされたら、どうしよう…」
そんな不安を感じる方もいるかもしれません。
でも、大丈夫です。
あなたが助けようとしなくても、支えにはなれます。
大事なのは、「一人じゃないよ」と伝えること。
専門家に相談してもいい。でも「どこでもいい」
もちろん、話を聴いたあとで「やっぱり心配」と思ったら、医療機関や相談窓口につないでください。
そしてそのときに大切なのは、「どこに相談すればいいか」にこだわりすぎないこと。
ご相談の窓口はたくさんあります
- かかりつけ医の児童精神科や心療内科
- 学校の先生・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー、教育相談室、学童や放課後デイサービスの先生
- 保健センター・こども家庭支援センター
- 児童相談所・いのちの電話 など繋がりやすい機関で構いません
「誰かに話せた」という経験そのものが、子どもの安心につながります。
入院が必要なときもあるけれど…
もちろん、場合によっては入院が必要なこともあります。
でも、それは「最後の手段」。
(主治医の許可が必要なのは前提として)大切なのは、入院中もその子に関わり続けること、
そして退院後の受け入れ体制を周囲で整えることです。
私たち大人がつながり、支え続けることによって、子どもたちに「生きていてよかった」と思ってもらえる社会が育っていきます。
繰り返しになりすが、
入院中も、外の大人たちとのつながりが途切れないようにし、
退院後にどう支えるかを考えることが、何より大切です。
「子どもを守る」ということは、病院に任せきりにすることではなく、
みんなで協力して見守る体制を作ることなのです。
最後に
子どもたちの「助けて」のサインに気づける大人が、今、求められています。
特別な知識も、特別な資格も、必要ありません。
「気づいて」「声をかけて」「つなげる」――それが、命を守る第一歩です。
この3つができる人が増えれば、それだけで子どもの命を支える力になります。
そして、その第一歩は、あなたにもできることです。
困ったときは、どこでも構いません。話せそうな誰かに、まずは専門機関に相談してみてください。
むしろ、それが子どもの命と未来を守る大きな一歩になります。