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「子どもが死にたいって言ってきた」ー大人にできることー

[2025.05.20]

こんにちは。

江戸川篠崎こどもと大人のメンタルクリニック院長の三木敏功(精神科専門医 子どものこころ専門医)です。

今回は、少し重たいテーマかもしれません。

でも、今の子どもたちにとって、とても大事なお話です。

「死にたい」って、本当に死にたいの?

「うちの子が“死にたい”って言ってきて…」

「リストカットしてるかもって聞いて、心がざわついた」

そんな話を聞くことが、最近本当に増えています。

でも、子どもたちの多くは「本当に死にたい」わけではありません。

「助けて」「わかってほしい」――それが本音のことがほとんどです。

  • 学校がつらい
  • 友だちとうまくいかない
  • 親に気持ちを分かってもらえない

こんな思いが少しずつ積もり、「もうムリ…」と感じたときに、

「死にたい」「いなくなりたい」という言葉としてあふれてしまうのです。

大人がパニックにならないために

そうした言葉を聞くと、親も先生も驚き、怖くなるのは当然です。

「すぐ入院させたほうがいいですか?」というご相談も少なくありません。

でも、まず必要なのは「急いで動くこと」ではなく、

子どもの心の声に耳を傾けることです。

「この子は、本当に命の危険があるのか」

「それとも、何かのきっかけで爆発してしまっただけなのか」

落ち着いて、丁寧に見ていくことが、最初にすべきことなのです。

子どもたちの“こころの番人”になれるのは?

子どもたちがつらさを口にするのは、信頼できる相手にだけです。

それは、親かもしれない。先生、部活のコーチ、保健室の先生、友達自身かもしれない。

その人たちが「こころの番人」――つまり、子どものゲートキーパーになれるのです。

たとえば、こんな一言が大きな支えになります。

  • 「最近、元気ないけど、何かあった?」
  • 「話したいことがあったら、いつでも聞くよ」
  • 「あなたのこと、大事に思ってるよ」

「専門家じゃないから…」「どう対応すればいいか分からない」

そう思う必要はありません。話を聴くだけで十分な支援になることがあるのです。

声をかけるのが怖いときは…

「余計なお世話にならないかな」

「重い話をされたら、どうしよう…」

そんな不安を感じる方もいるかもしれません。

でも、大丈夫です。

あなたが助けようとしなくても、支えにはなれます。

大事なのは、「一人じゃないよ」と伝えること。

専門家に相談してもいい。でも「どこでもいい」

もちろん、話を聴いたあとで「やっぱり心配」と思ったら、医療機関や相談窓口につないでください。

そしてそのときに大切なのは、「どこに相談すればいいか」にこだわりすぎないこと。

ご相談の窓口はたくさんあります

  • かかりつけ医の児童精神科や心療内科
  • 学校の先生・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー、教育相談室、学童や放課後デイサービスの先生
  • 保健センター・こども家庭支援センター
  • 児童相談所・いのちの電話 など繋がりやすい機関で構いません

「誰かに話せた」という経験そのものが、子どもの安心につながります。

入院が必要なときもあるけれど

もちろん、場合によっては入院が必要なこともあります。

でも、それは「最後の手段」。

(主治医の許可が必要なのは前提として)大切なのは、入院中もその子に関わり続けること、

そして退院後の受け入れ体制を周囲で整えることです。

私たち大人がつながり、支え続けることによって、子どもたちに「生きていてよかった」と思ってもらえる社会が育っていきます。

繰り返しになりすが、

入院中も、外の大人たちとのつながりが途切れないようにし、

退院後にどう支えるかを考えることが、何より大切です。

「子どもを守る」ということは、病院に任せきりにすることではなく、

みんなで協力して見守る体制を作ることなのです。

最後に

子どもたちの「助けて」のサインに気づける大人が、今、求められています。

特別な知識も、特別な資格も、必要ありません。

「気づいて」「声をかけて」「つなげる」――それが、命を守る第一歩です。

この3つができる人が増えれば、それだけで子どもの命を支える力になります。

そして、その第一歩は、あなたにもできることです。

困ったときは、どこでも構いません。話せそうな誰かに、まずは専門機関に相談してみてください。

むしろ、それが子どもの命と未来を守る大きな一歩になります。

 

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