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EMDR治療って何ですか?

[2025.04.16]

こんにちは。江戸川篠崎こどもと大人のメンタルクリニック院長の三木敏功(精神科専門医 子どものこころ専門医)です。

今回は、私自身も専門として取り組んできたEMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)という心理療法についてご紹介します。

EMDRとは?

1989年、アメリカのフランシーヌ・シャピロ博士によって開発された治療法であり、主にPTSD(心的外傷後ストレス障害)やトラウマによる心の苦しみに効果的だとされています。現在では、WHO(世界保健機関)や米国精神医学会でもその有効性が認められ、エビデンスに基づいたトラウマ治療の一つとして、世界中で活用されています。

私は、2014年に日本EMDR学会(https://www.emdr.jp)の治療者リストに登録され、これまで精神科病院に勤務していた期間に、子どもから大人まで、入院治療の中で多くの方にEMDRを実施してきました。特に、虐待やいじめ、事故など、過去の体験が現在のこころの不調に影響している方に対して、非常に有効な支援ができる治療法だと実感しています。

EMDRってどんな治療?

EMDRでは、トラウマや不安の記憶を思い出しながら、左右の眼球運動や手のタッピング、音の刺激など左右交互に感覚を刺激する方法(バイラテラル・スティミュレーション)を使って治療を進めていきます。これにより、脳内で情報の処理や記憶の再統合が進み、つらかった記憶へのとらわれが軽くなっていきます。

これは、睡眠中の「レム睡眠」に似た脳の働きを人工的に促していると考えられています。実際に多くの研究で、PTSDや不安障害、複雑性トラウマ(複数の体験による深い心の傷)に対して効果が確認されています。

子どもにもEMDRって使えるの?

はい、使えます。ただし大人と同じ方法ではなく、安全性をより重視した対応が必要です。私が行ってきた臨床では、お子さまの場合、目の動きを使う代わりに「両側のタッピング(左右交互に手や膝に触れる)」を用いた方法と、お子さまが信頼している大人(養育者)の方にもセッションに加わってもらう方法が特に安全で効果的でした。これにより、身体感覚を通じて脳が安心感を持ちながら治療が進められます。

また、年齢や発達段階に応じて、絵や遊び、ストーリーなどを交えて工夫することで、お子さまの治療への参加意欲も高まりやすくなります。

どんな人に向いているの?

以下のような経験や症状をお持ちの方に、EMDRは適していることが多いです:

  • 交通事故、災害、事件などによるフラッシュバックや不安
  • 幼少期の虐待、いじめ、家族内のトラウマ的体験
  • 発達障害のある方が体験した心の傷
  • 繰り返し思い出すつらい記憶や感情
  • 医療的トラウマ(入院や治療への恐怖)

また近年では、HSP(感受性の高い方)や愛着障害、複雑性PTSDなど、より広い領域での活用も進んでおり、幅広い年代や背景をもつ方への支援として注目されています。

当院での対応について

現在、診療体制が不十分のため、当院ではEMDRそのものは実施しておりません。

当院では、薬物治療によりトラウマ症状やPTSD症状の緩和を目指しております。

「過去のトラウマ経験により生活に困難が起こっている。辛すぎて、過去にはまた向きあえない。現在の辛さを少しでもお薬を使って楽になりたい」という方には当院へのご相談は合っているのかなと思っています。一緒に考えていけたらと思います。

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